日本国内では多種多様な焼きそばが各地で愛されていますが、特に有名なのが次の三つの地域から来る焼きそばです。
「富士宮やきそば」は静岡県富士宮市で、地元民に深く愛されており、秋田県横手市の「横手やきそば」、そして群馬県太田市の「太田焼きそば」もそれぞれの地域を代表する味として知られています。
これらの焼きそばはそれぞれが独自の食材や調理法を生かし、特有の風味と魅力を持っています。
この記事では、これらの焼きそばがどのようにしてその地位を築き上げたのか、その背景にある物語とともに詳しく解説します。
是非、これら独特の味わいを自ら体験してみてください。
焼きそばの進化とその人気の背景
焼きそばは、ジューシーな肉とカラフルな野菜を組み合わせた日本の伝統料理で、クラシックなウスターソース味や塩味、あんかけスタイルなど、多様なフレーバーが楽しめます。
元来、屋台で人気を集めていた焼きそばは、迅速に調理され、お好み焼きやもんじゃ焼きなど他のストリートフードと同じ材料を使用することがあります。
1963年には日清食品が市場に「日清焼きそば」を導入し、その後1975年に東洋水産が家庭用の「焼きそば3人前」を、1976年には「日清焼そばU.F.O.」を発売し、どちらも大成功を収めました。
これらの商品が市場に広がることで、家庭でも手軽においしい焼きそばを楽しむことができるようになり、日本全国で広く親しまれるようになりました。
また、地方ではそれぞれの地域に合わせたプロモーションが行われ、焼きそばの魅力を積極的にアピールしています。
第二次世界大戦後の小麦粉の普及によって一度ブームに火が付き、市販の製品のヒットによって再度人気が定着しました。
2000年代に入ると、「富士宮やきそば」が新たなブームを引き起こす契機となりました。
B-1グランプリ:地方焼きそばの魅力と地域活性化への貢献
B-1グランプリは、地方の名産料理を競うことで、地域の振興と活性化を目指すイベントです。
2006年に初めて開催されて以来、料理愛好家や多くの観光客を引き寄せ、全国各地から選ばれたユニークな料理が競い合っています。
このイベントは2016年まで毎年続けられていましたが、2017年と2018年は一時休止。
2019年にイベントは一度復活しましたが、その後、新型コロナウイルスの影響で中断されました。
しかし、2023年には「2023東海・北陸B-1グランプリin四日市」が開催され、4年ぶりに復活し、多くの人々がこのイベントに集まりました。
2023年のイベントでは、三重県松阪市の「Do it!松阪鶏焼き肉隊」が最優秀賞を受賞。
静岡県富士宮市の「富士宮やきそば学会」が2位、三重県亀山市の「亀山みそ焼きうどん本舗」が3位に輝きました。
特に「焼きそば」は、このイベントで何度も最優秀賞を獲得し、各地の個性あるバリエーションが高く評価されています。
B-1グランプリは、日本の地方料理がどのようにして全国に広まり、地域が活性化しているかの良い例となっています。
以下に、B-1グランプリの開催歴を通じてどの地域のどの料理が注目されたかを年度別に示しておきます。
回 | 年度 | 受賞料理 | 地域 |
第1回 | 2006年 | 富士宮やきそば | 静岡県富士宮市 |
第2回 | 2007年 | 富士宮やきそば | 静岡県富士宮市 |
第3回 | 2008年 | 厚木シロコロ・ホルモン | 神奈川県厚木市 |
第4回 | 2009年 | 横手やきそば | 秋田県横手市 |
第5回 | 2010年 | 甲府鳥もつ煮 | 山梨県甲府市 |
第6回 | 2011年 | ひるぜん焼そば | 山梨県甲府市 |
第7回 | 2012年 | 八戸せんべい汁 | 青森県八戸市 |
第8回 | 2013年 | なみえ焼きそば | 福島県双葉郡浪江町 |
第9回 | 2014年 | 十和田バラ焼き | 青森県十和田市 |
第10回 | 2015年 | 勝浦タンタンメン | 千葉県勝浦市 |
特別大会 | 2016年 | あかし玉子焼 | 兵庫県明石市 |
第11回 | 2019年 | 津ぎょうざ | 三重県津市 |
焼きそば、強いですね!
「三国同麺」プロジェクトによる日本三大焼きそばの振興
2002年、静岡県の富士宮市、秋田県の横手市、そして群馬県の太田市は、それぞれの地域で愛される独自の焼きそばを全国に広める目的で「三国同麺」という共同プロモーションを開始しました。
これらの都市は自身の焼きそばを通じて、地域の特色と文化をアピールしています。
この活動では、焼きそばをB級グルメとして位置づけ、興味深い言葉遊びを取り入れた「三者麺談」というイベントを展開しました。
参加都市が「三国同麺協定書」に署名することで、互いの協力と友情を深めつつ、この人気料理の魅力をさらに広めることに成功しました。
このユニークなアプローチは、「日本三大焼きそば」としての認知を国内で拡大するきっかけとなりました。
日本三大焼きそば:①富士宮焼きそばin静岡
富士宮焼きそばは麺に秘密あり
静岡県富士宮市の特色あるやきそばは、地元の4つの製麺所が製造しています。
- マルモ食品工業
- 叶屋
- 曽我めん
- さのめん
という製麺所が、それぞれ独自の製法で特別な麺を生産しており、これらの麺は未茹での状態で使用されるため、少ない水分で硬い食感が特徴です。
戦後初期、まだ冷凍技術が発展していなかった時代に、急速冷却後に油でコーティングすることで保存性を高める製法が開発されました。
この生産方法は自動化や大量生産には向かないため、他地域では普及していないものの、富士宮市ではこの麺が地域特有の特徴として広く受け入れられ、愛され続けています。
富士宮やきそばの深い味わい:「肉かす」
富士宮やきそばには欠かせない「肉かす」という成分があります。
これは豚の脂肪を加工してラードを抽出する際に生じる副産物で、豚の背脂を水に浸して加熱し、脂肪が分離する過程で得られます。
豚本来の濃厚な風味と香りが特徴で、やきそばに独特の深みと豊かな味わいを加えます。
市場に新登場した富士宮やきそば風カップ麺
東洋水産(マルちゃん)は、富士宮市の伝統的なやきそばの味を再現した新しいカップ麺を市場に投入しました。
このカップ麺は、富士宮の焼きそばの特徴を模倣した製品として設計されており、本物の味わいを手軽に楽しむことができます。
革新的な提供方法:缶詰としての富士宮やきそば
ホテイフーズは、富士宮やきそばを便利な缶詰形式で提供し、どこでもいつでもこの地域の名物を楽しむことが可能になりました。
この革新的な取り組みにより、伝統的な料理が新しい形で提供されています。
日本三大焼きそば:②秋田の風土が生んだ横手やきそばの独特な魅力
秋田県横手市の郷土料理である「横手やきそば」は、地元民に深く愛されるだけでなく、日本三大焼きそばの一つとしても知られています。
横手やきそばの魅力
この料理は第二次世界大戦後、お好み焼き店が新しい鉄板料理として開発したことが起源で、2009年にはB-1グランプリで優勝を果たし、全国的な名声を獲得しました。
地元の「横手やきそば暖簾会」がこの料理の普及を推進し、料理名を平仮名で表記することを推奨しています。
また、地元の製麺業者と協力して改良を重ね、その手軽さが他地域でも人気を博しています。
横手やきそばは、地域の文化やアイデンティティを象徴する料理として広く親しまれています。
横手やきそばの特徴
横手やきそばの特徴として、この地域が冬のかまくらで知られるように、その地方料理も特別な地位を占めています。
使用される麺は太くて直線的な角麺で、茹で上がりはモチモチとした食感が楽しめます。
具材には豚肉とキャベツをたっぷり使い、一般的に半熟の目玉焼きがトッピングされます。
地域特有のウスターソースは出汁が効いており、その優しい甘みが焼きそば全体に深みを加えます。
さらに、一般的な焼きそばに紅しょうがが添えられることが多い中、横手やきそばでは福神漬けが用いられることが多く、これが料理に独特の味わいのアクセントを加えています。
横手やきそばの製造を支える地元製麺会社とその重要性
秋田県横手市で製造される横手やきそばは、地元の5つの製麺会社が支えています。
これらの企業は、地域の伝統料理を支え、品質維持に不可欠な役割を果たしています。
主な製麺会社は以下の通りです。
- 林泉堂株式会社
- 石谷製麺工場
- トヤマフーズ株式会社
- 長沢製麺所
- 雄大食品(福龍)
これらの製麺所は、横手やきそば特有の太くてモチモチとした麺を提供し、地元の味の維持に努めています。
横手やきそばの評価を競う年間イベント
横手市では毎年、「横手やきそば四天王決定戦」というイベントが開催されており、2007年から続いています。
このイベントは地元のやきそばの品質向上と普及を目的としており、特に優れたやきそばを提供する店舗が表彰されます。
2022年には以下の店舗が四天王に選ばれました。
- 食い道楽 本店
- 藤春食堂
- 皆喜多亭
- 旨味処出端屋
2000年代から「横手やきそば」は全国的に有名なB級グルメとして知られるようになり、特に「食い道楽」はこの料理の普及に大きく貢献しています。
この店は2007年の「横手やきそばグランプリ決定戦」で初代チャンピオンに輝き、その後も12年連続で四天王に選ばれ続けるなど、その地位を確立しています。
2023年からは「横手やきそばフェスティバル2023」としてイベントがリニューアルされ、横手市全体の魅力を横手やきそばを通じてさらに広く発信する新しい形式が導入されました。
日本三大焼きそば:③群馬の味わいを代表する太田焼きそば
群馬県太田市が誇る「太田焼きそば」は、そのユニークな味わいで日本三大焼きそばの一つとして名高いです。
太田焼きそばは伝統の味
地元では「上州太田焼きそば」とも呼ばれ、この「上州」という名前は群馬県の旧称に由来しています。
「上州太田焼きそばのれん会」はこの焼きそばの普及と維持に尽力しており、地域固有の食文化を守り広めるための活動を積極的に行っています。
この伝統的な料理は、太田市の食文化を象徴するものとして地元民から深い愛情を受けています。
太田焼きそばの特徴
太田市は、新田義貞やSUBARUの発祥地としても知られ、その文化的背景が焼きそばのスタイルにも反映されています。
ここでは、特に定型にはまらない自由なスタイルで、太い麺を使用したシンプルなソース焼きそばが好まれます。
地元の飲食店では、さまざまなアレンジを加えた個性的な焼きそばを楽しむことができます。
太田焼きそばは、その製法や味だけでなく、地域のアイデンティティとしても重要な役割を果たしています。
高度成長期には多くの労働者が集まる中で焼きそばが普及し、特に秋田県横手市からの移住者によって、その文化がさらに豊かになったとされています。
太田焼きそばは、ただの料理以上の存在であり、太田市の独自の食文化を形成し、多くの人々に愛され続けています。
【まとめ】日本三大焼きそばの魅力とその特色
日本各地には個性豊かな地域焼きそばが存在しますが、特に
- 「富士宮やきそば」(静岡県富士宮市)
- 「横手やきそば」(秋田県横手市)
- 「太田焼きそば」(群馬県太田市)
は日本三大焼きそばとして広く知られ、多くの愛好家に親しまれています。
これらの焼きそばはそれぞれ、地元の風土が育んだ独自の特徴を持っており、国内外のファンから注目されています。
富士宮やきそばはその弾力ある独特の麺が特長で、横手やきそばはその太く直線的な麺が印象的です。
一方、太田焼きそばは定型に囚われない多様なスタイルが存在し、各店舗ごとに異なる個性を楽しむことができます。
これら日本三大焼きそばが持つユニークな特徴は、日本の地域ごとの文化や食の多様性を色濃く反映しています。
是非、これらの焼きそばを直接味わい、その深い魅力を体験してみてください。